東京医科大学病院リウマチ・膠原病内科

当科の研究紹介

新しい医学を切り開く試み

 リウマチ膠原病の臨床は生物学的製剤等の新薬の登場により大きく進歩し、寛解を目標とした診療が可能な時代となりました。一方で、未知の病態や、難治性病態など解決すべき課題がまだまだ多く残されています。我々は、臨床研究、基礎研究を通じて、新しいリウマチ膠原病診療の展開を切り開くことができるよう、研究活動を行っています。

1.臨床研究

関節リウマチ(RA)患者を対象とした大規模データベースであるNINJAに参加し、RAに関する疫学研究を行っています。1万人以上の患者情報が含まれるデータベースを活用し、RAの臨床的特徴を明らかにするための臨床研究を行っています。RAにおけるDIP関節炎の頻度に関する研究(Mizuuchi T, Sawada T, et al. J Clin Med. 2022. 11:1405)、り患関節分布に関する研究(Yamamoto Y, Sawada T, et al. Int J Rheum Dis. 2022. 25:1020-1028)、リウマチによる疼痛に関する研究などが主なテーマです。

その他の課題として、ベーチェット病に関する臨床研究、これからの課題である膠原病患者の妊娠・出産等のライフステージに関する症例研究を行っています。

2.関節リウマチにおける自己免疫応答研究

 RAの病態における自己抗体として、抗シトルリン化抗原抗体が知られています。当科ではシトルリン化フィブロネクチンやシトルリン化フィブリノーゲンの疾患活動性との関連を検討するとともに、血清や関節液を用いてRA特異的な新規シトルリン化ペプチド探索を継続しています。血中シトルリン化抗原がRAの早期診断や活動性判定に有用なバイオマーカーとして同定されれば、臨床的意義は大きいと期待されます。

3. SLEバイオマーカー研究

当科ではSLEの新規バイオマーカーとして、リゾリン脂質であるPS-PLA1を同定しました(Sawada T, et al. Int J Rheum Dis. 2019. 22:2059-2066)。SLE患者における血清PS-PLA1値はSLEの疾患活動性と関連することを見出しました。またリゾリン脂質の代謝に関連するオートタキシン(ATX)が、SLE患者においてI型インターフェロンにより制御され病態形成に重要な役割を果たしていることを、東京大学との共同研究で見出しました(Tsuchida Y, Shoda H, Fujio K, Sawada T. Lupus. 2022. 31:15578-1585, Tsuchida Y, Shoda H, Sawada T, Fujio K. Front Med(Lausanne) 2023. 10:1166343)。現在、臨床応用に向けた研究を継続中です。

4. 免疫学的フェノタイピングによる新規バイオマーカー研究

 自己免疫疾患患者さんの個々の免疫の状態を理解するために、様々な免疫細胞の割合を検討する免疫細胞フェノタイピングという方法があります。当科ではFACSやRNAseqを活用し、自己免疫疾患患者さんの病態、臨床経過、治療応答、予後などについて、臨床応用をめざしたバイオマーカー検索研究を行っています。